LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)
定義と基準値
low density lipoprotein cholesterol (LDL-C)
基準値: 60~139mg/dL
検査データの読み方
- 軽度増加 (139~159mg/dL)
- しばしばあるいは時に認める病態: 家族性高コレステロール血症、家族性欠陥アポ蛋白B血症、家族性複合型高脂血症、家族性Ⅲ型高脂血症、特発性高コレステロール血症、糖尿病、甲状腺機能低下症、先端巨大症、下垂体機能低下症、Cushing症候群、閉塞性黄疸、肝細胞癌、Zieve症候群、脂肪肝、膵炎、ネフローゼ症候群、痛風、高尿酸血症、妊娠、薬物(ステロイド剤、経口避妊薬、β-ブロッカー)
- 中等度増加 (160~189mg/dL)
- しばしばあるいは時に認める病態: 家族性高コレステロール血症、家族性欠陥アポ蛋白B血症、家族性複合型高脂血症、家族性Ⅲ型高脂血症、特発性高コレステロール血症、糖尿病、甲状腺機能低下症、先端巨大症、下垂体機能低下症、Cushing症候群、閉塞性黄疸、肝細胞癌、Zieve症候群、ネフローゼ症候群
- 高度増加 (190mg/dL以上)
- しばしば認める病態: 家族性高コレステロール血症、家族性欠陥アポ蛋白B血症
- 時に認める病態: ネフローゼ症候群
異常値の原因
LDL-コレステロールは動脈硬化症起因性のコレステロールとして知られています。LDL-コレステロールの値が高いと、虚血性心臓病のリスクが増加します。そのため、治療の目的はLDL-コレステロール値を低下させることです。LDL-コレステロールの治療目標値は各患者の動脈硬化リスクにより異なります。
注意点:
- 過食
- 運動不足
治療薬:スタチンとエゼチミブ
スタチン スタチンは肝臓でのコレステロール合成を阻害する薬剤です。HMG-CoA還元酵素を抑制し、肝臓でのコレステロール生産を減少させます。この結果、肝臓は血中からより多くのLDLコレステロールを取り込み、血中のLDLコレステロール濃度を低下させます。スタチンは心血管疾患リスクの高い患者に対する第一選択薬として広く用いられています。
エゼチミブ エゼチミブは腸管でのコレステロール吸収を阻害する薬剤です。食事由来のコレステロールや胆汁由来のコレステロールの吸収を抑えることで、血中のLDLコレステロール濃度を低下させます。エゼチミブはスタチンと併用されることが多く、スタチン単独では十分な効果が得られない場合に特に有効です。
遺伝子異常と高LDLコレステロール
家族性高コレステロール血症(FH)は、LDL受容体の遺伝子異常により、LDLコレステロールが血中に過剰に存在する疾患です。この疾患は常染色体優性遺伝であり、片親から異常遺伝子を受け継ぐだけで発症します。FHの患者は若年で動脈硬化症を発症しやすく、心筋梗塞などのリスクが高まります。
主要な遺伝子異常
- **LDL受容体遺伝子(LDLR)**の変異: LDL受容体の機能不全により、LDLコレステロールの肝取り込みが低下します。
- アポリポプロテインB(APOB)遺伝子の変異: LDL受容体と結合するアポリポプロテインBの変異により、LDLの取り込みが低下します。
- PCSK9遺伝子の変異: PCSK9はLDL受容体の分解を促進しますが、変異によりLDL受容体の数が減少し、LDLコレステロールが増加します。
これらの遺伝子異常を持つ患者には、早期の診断と治療が重要です。スタチンやエゼチミブを用いた薬物療法が基本となりますが、場合によってはLDLアフェレーシスなどの特殊な治療が必要になることもあります。
ワンポイントアドバイス
- 現在、日本女性のコレステロール値は世界一高いです。男女ともに20歳以降、加齢に伴い徐々に増加します。特に女性は更年期を境に急速に増加するため注意が必要です。
- 高LDLコレステロール値が指摘された場合、卵やレバーの摂取を控え、定期的なエクササイズを心がけましょう。




