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蕁麻疹(じんましん)


概念と定義 
じんま疹は、限局性の痒みと発赤を伴う膨疹で、突然出現し数時間後に消退する一過性、局在性、表在性の浮腫である。体中に点状、線状、円形、世界地図のように膨らんだ発疹が出没し、また移動していく。 深在性(真皮下層の皮下脂肪)に出現した浮腫を特に血管浮腫と呼ぶ。広範に皮膚が硬結し、痒みは少ない。、眼瞼や口唇に多くみられる。臨床経過より急性型と4週以上続く慢性型に分ける。じんま疹は非常に多く、5人に1人は一生に一度は経験するといわれている。そのうち、物理性じんま疹は5%に存在する。  

そんなに掻いちゃだめだよ!

限局性の痒み発赤を伴う膨疹(ミミズバレ) 突然出現し、移動し、数時間後に消退する浮腫

一部は重篤なアナフィラキシーの前駆症状として発現することもある。 

急性じんま疹は、原因がなくなれば消失する。物理性じんま疹の多くは数年後に軽快するが、原因不明のじんま疹は長期化することが多い。基礎疾患に伴うものは、その病状に左右される。


病態生理
皮膚の発赤は血管拡張、浮腫は血管透過性亢進による血漿成分が組織に漏出して生ずる。
じんま疹は真皮上層の毛細血管、血管浮腫は真皮下層の血管周辺の病変である。

その原因は多様であるが、機序はアレルギー性と非アレルギー性に大別される。また最近は肝炎ウイルスをはじめとした、種々のウイルス感染が原因として考えられている。

じんま疹の分類
アレルギー性 1)IgEを介するI型アレルギー反応
 食物、薬剤、環境抗原、昆虫毒素など
2)補体を介する反応
 免疫複合体、感染、輸血、癌、遺伝性血管浮腫(HAE)
非アレルギー性
 (非物理的刺激
)
1)物理性じんま疹
 機械性、寒冷、温熱、運動、日光、水、圧迫、振動、コリン性
2)非ステロイド性抗炎症薬による反応
 アスピリン、食品添加物
3)その他ヨード造影剤、精神的ストレス 
感染症 1)ウイルス感染など


他のアレルギー性疾患と同様に、肥満細胞が活性化しメディエーター遊離して病気がおきる。

これらの物質はともに血管の拡張、血管透過性を亢進させ、さらに神経を刺激して、皮膚の発赤、浮腫、痒みが出現する。

つまり、皮膚に存在する肥満細胞は、種々の刺激により脱顆粒し貯蔵されていたヒスタミン、白血球走化因子、蛋白分解酵素などを放出する。また、細胞膜内のホスホリパーゼA2が作動してアラキドン酸が生成され、シクロオキシゲナーゼによりプロスタグランジンが、リポキシゲナーゼによりロイコトリエンが新たに生成遊離する。これらのケミカルメディエーターは、血管拡張、血管透過性亢進作用をもち、じんま疹の形態である発赤と浮腫を起こす。走化因子は白血球の浸潤を促す。 

 I型アレルギーの主な原因は、食物、薬物、吸入・接触抗原、昆虫毒素などである。それらは肥満細胞上のIgE抗体と反応し肥満細胞の脱顆粒を起こす。補体の活性化は免疫複合体、輸血、感染、悪性腫瘍、遺伝性血管浮腫(Ci inactivator欠損)で起き、C3a,C5aなどのアナフィラトキシンが生成されて肥満細胞を刺激する。
何が原因か、調べることは重要だ
非アレルギー機序の物理性じんま疹1)は、機械性(皮膚描記)、温熱、寒冷、日光、水、圧迫、振動、運動などの物理刺激により肥満細胞が脱顆粒することで生じる。神経を介して肥満細胞を刺激する場合をコリン性じんま疹と呼ぶ。非ステロイド性抗炎症薬(アスピリンなど)、食品添加物に使われる着色料や防腐剤は組織シクロオキシゲナーゼの阻害によりロイコトリエンの産生が高まり、血管透過性が亢進すると考えられる。

いずれの原因の場合も強い反応が起きれば、全身のアナフィラキシーに進行する。全身のじんま疹、血管浮腫から循環血液量の減少をきたし、低血圧ショック症状、喘息症状、下痢を起こす。喉頭浮腫では窒息の危険もある。 

食物アレルギーのじんま疹が疑われたとき、その食物自体の抗原ではなく、食物に含まれた不純物がアレルゲンになっているケースがある。小麦粉から自家製のパンを作り、じんま疹からアナフィラキシーになったケースでは、小麦粉に対するIgE抗体は証明されず、ダニアレルゲンに陽性を示した。結局、開封した小麦粉袋の中にダニが繁殖し、そのダニアレルゲンが経口負荷されてじんま疹が出たことが判明した。サバを食べてじんま疹が出ることは珍しくないが、サバの蛋白ではなくサバに寄生した寄生虫(アニサキス)にアレルギーを起こすケースも報告されている。これらの事例からわかるように、蕁麻疹のアレルゲンを簡単に決めることは容易ではない。
 


臨床検査所見 
IgEの関与したI型アレルギーが原因のじんま疹は、即時型皮膚テストRASTが陽性となる。補体の関与した反応では、補体価の低下をみる。物理性じんま疹は、皮膚への様々な物理刺激(圧迫、引っかく、暖める、冷やすなど)の負荷によって再現(赤色皮膚描記症)できる。皮膚の発赤は血管拡張によるものであるから、圧迫するとその部分は発赤が消える。食物や薬物の負荷試験が正確な診断の決め手であるが、若干の危険性を伴う。 

赤色皮膚描記症(gramoderphia rubra) 腹部に拡がった鎮痛剤誘発性蕁麻疹

診断 
一過性の皮膚の発赤と膨疹を観察すれば、診断は難しくないが、原因を特定することは容易でない。詳細な問診により、原因となるアレルゲン、状況、薬剤などを推定し、検査、負荷試験で確認する。膠原病、感染、悪性腫瘍、補体系異常によるものは基礎疾患の診断が重要である。 


療、管理と予防 

原因療法
蕁麻疹の原因・誘因が明らかであれば、それらを回避する。
アレルゲンとなる食物、薬剤、吸入・接触抗原や物理刺激を除くほか、精神的・肉体的ストレス、疲労、睡眠不足などは自律神経の失調を招き増悪するので、ストレス管理に努める。(「会社で嫌な上司に会うと虫酸が走る」なんて言葉は蕁麻疹の発症を上手に説明しています。)
ストレス対策を忘れずに(重要)

対症療法

抗ヒスタミン薬を用いる。保険適用は無いが、管理困難な場合にヒスタミンH2受容体拮抗薬(ガスターなど)を併用すると効果があがることもある。4週以上続く慢性じんま疹には、抗アレルギー薬(ケトチフェン、アゼラスチン、ペミロラスト、タザノラストなど)を連用し、症状が重く、難治性の場合には、副腎皮質ステロイドを短期間使用する。心因性のじんま疹には、精神安定剤抗うつ薬の投与も考慮する。基礎疾患に伴うじんま疹は、基礎疾患の治療が欠かせない。アナフィラキシーによる喉頭浮腫は、気道を確保しアドレナリン(エピネフリン)の注射を至急行う。
体質改善

アレルギー疾患の中でもっとも専門家が治療に難渋するのが蕁麻疹だといわれる。体質改善療法も試みるが、喘息や鼻アレルギーほど特異的減感作療法の効果は認められない。しかし非特異的減感作療法は時に有望であり、慢性化した蕁麻疹では是非試みてほしい治療方法である。


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