高血圧

概念

従来、収縮期血圧が160mmHg以上、あるいは拡張期血圧が95mmHg以上を高血圧、収縮期血圧が140mmHg未満、拡張期血圧が90mmHg未満を正常血圧と定義していました。この中間を境界域高血圧としましたが、現在ではさらに高血圧の定義が厳しくなり、従来の境界型高血圧域も診療の対象とされています。高血圧のうち原因が特定できない例を本態性高血圧症と呼びます。本症例は中年以降に発症し、慢性的な経過をたどりますが、罹患率が高く、脳、心臓、腎臓などの主要臓器に影響を与え、動脈硬化性疾患の経過にも密接に関与しています。

病因と病気の成り立ち

本態性高血圧症は、遺伝性素因と環境因子が揃って発症すると考えられます。遺伝は常染色体優性遺伝と考えられ、環境因子としては食塩、ストレス、肥満などがあります。

血圧は心拍出量と末梢血管抵抗の積によって決まります。

血圧=心拍出量×末梢血管抵抗
  • 心拍出量増加の要因:交感神経系の活性化と体液量の増加が主な要因です。体液量の増加は腎からの塩分排泄障害や塩分貯留因子の増加が原因です。
  • 末梢抵抗の増加:抵抗血管の異常や血管収縮性に作用する神経体液性因子の増加、あるいは血管拡張因子の減少などがあります。

最新の診断基準

2024年現在、高血圧の診断基準は以下の通りです:

  • 正常血圧:収縮期血圧 < 120 mmHg かつ 拡張期血圧 < 80 mmHg
  • 高値血圧:収縮期血圧 120-129 mmHg かつ 拡張期血圧 < 80 mmHg
  • 高血圧1度:収縮期血圧 130-139 mmHg または 拡張期血圧 80-89 mmHg
  • 高血圧2度:収縮期血圧 140-179 mmHg または 拡張期血圧 90-119 mmHg
  • 高血圧3度:収縮期血圧 ≥ 180 mmHg または 拡張期血圧 ≥ 120 mmHg

家庭内血圧測定の重要性

家庭内血圧測定は重要です。オムロンや松下の製品を選び、上腕式の血圧計を使用しましょう。起床後、血圧を測定し、早朝高血圧を認める場合は、主治医に相談しましょう。

頻度・疫学

高血圧は加齢とともに上昇し、女性では閉経後に多く発症します。日本では約1,600万人が高血圧症、約1,400万人が境界域高血圧症とされています。地域差として寒冷地に多く、塩分摂取量とも相関します。

高血圧の合併症

高血圧は多くの合併症を引き起こします。動脈硬化性疾患や心筋肥大、心不全、腎不全などがあります。血管内皮の損傷が原因で血管の狭小化が起こり、血圧がさらに上昇します。

臨床的特徴

中等度高血圧までは特徴的な症状に乏しいことが多いです。進行すると心肥大や血管雑音が認められます。自覚症状としては、頭痛、眩暈、肩こり、息切れ、動悸、冷や汗、胸痛などがあります。

検査所見

検査は二次性高血圧の除外と高血圧性合併症の診断を目的とします。日常的に行われる検査には、胸部X線、心電図、尿検査、血算、血液生化学検査、心臓超音波検査などがあります。

治療、管理と予防

ダイエット、減量、アルコール制限、運動、食塩制限、禁煙が重要です。それでも効果がない場合は薬物療法を開始します。

高血圧対策

中高齢者に高血圧が発生するのは自然なことです。簡単な治療が豊かな老後を保証します。できるだけ若いときに高血圧を発見し、早期から治療に入ることが重要です。高血圧であることを受け入れない姿勢は人生にとって大きなマイナスです。

ACE阻害薬とARBは心筋血管壁保護作用やインスリン感受性の改善などの付加価値があります。Ca拮抗薬はオールマイティーな感がありますが、副作用もあります。

リスクに応じた治療法の選択が提唱されています。単に血圧を下げるだけでなく、血管保護や患者のQOLを考慮に入れた降圧療法が求められています。