インフルエンザ

感染ルート

インフルエンザウイルスは部屋中にばら撒かれます。直接接触による感染も考えられますが、大部分は患者が咳やくしゃみをした際に放出される小滴中に含まれたウイルスによって感染します。この小滴は直径2μm以下で、ヒトの下部気道にまで達します。ウイルスは気管支粘膜で増殖し、最初に感染してから2日後にはウイルス増殖がピークに達します。罹患者からのウイルスの排泄は感染後1週間続きます。


臨床症状

インフルエンザの主な症状には以下のものがあります:

  • A型インフルエンザウイルスによる感染: 頭痛、悪寒、乾性の咳などを伴って突然発症し、続いて高熱、筋肉痛、全身衰弱、食欲不振が起こります。発熱は通常38~40℃で、24時間以内にピークに達し、平均3日間持続します。咽頭痛、声枯れ、咳、痰、鼻汁などの呼吸器症状も現れます。
  • B型インフルエンザウイルスによる感染: A型とほぼ同様の症状ですが、筋炎と消化器症状を起こす確率が高いです。
  • C型インフルエンザウイルスによる感染: 上気道感染症を起こしますが、重篤な下気道感染は少ないです。

インフルエンザの歴史と疫学

インフルエンザの流行は紀元前412年のヒポクラテスの記述から伝えられています。20世紀には何度も大きな流行が起こりました。インフルエンザウイルスは抗原変異が激しく、連続変異と不連続変異があります。連続変異は毎年のように起こり、不連続変異は大きな変異を引き起こします。

現在、A型インフルエンザウイルスとしてはH1N1とH3N2の2種類、それにB型の合計3種類が流行しています。インフルエンザワクチンは毎年WHOの推奨を参考にして決定されます。


確定診断

インフルエンザの確定診断には以下の方法があります:

  • ウイルス分離: 発病後3日以内の患者のうがい液か咽頭ぬぐい液を使用します。
  • 血清学的診断: 発病後3日以内の急性期と2週以後の回復期血清を採取し、抗体価を測定します。

迅速診断キットを使用すると、15分以内に結果がわかります。この方法ではインフルエンザの型も判定でき、適切な薬の選択が可能です。


予防

インフルエンザ予防には手洗いとワクチン接種が重要です。

  • 手洗い: 外出後はすぐに手洗いとうがいを行いましょう。
  • ワクチン接種: ワクチン接種により、感染の予防と重症化の阻止が可能です。特に高齢者や基礎疾患がある人は接種が推奨されます。

治療

インフルエンザの治療は対症療法と原因療法があります。

  • 対症療法: 安静を保ち、室内の温度・湿度を高くします。発熱・頭痛には解熱薬や鎮咳薬を用います。細菌の二次感染があれば抗生物質を使用します。
  • 原因療法: 抗ウイルス薬(タミフル、リレンザ)の使用により、早期に症状を改善します。発熱後24時間以内にこれらの薬を投与することが重要です。