アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis; AD)は、1933年にMarion Sulzbergerらによって使われ始めた比較的新しい病気です。遺伝的要素が強く、喘息やアレルギー性鼻炎と同一家系内で発症することが多いです。

主な症状

  1. アトピーの家族歴がある。
  2. 乳児湿疹がある。
  3. 肘窩、膝窩、前頚部、胸、顔面、眼瞼に病変が局在する。
  4. 皮膚に灰色あるいは褐色の変化がみられる。
  5. 接触性皮膚炎と異なり、臨床的・組織学的に小水疱がみられない。
  6. 血管運動神経の不安定性あるいは易刺激性。
  7. 多くの接触抗原のパッチテストが陰性である。
  8. 多くの環境蛋白抗原、食物蛋白抗原のスクラッチテストあるいは皮内反応が陽性である。
  9. 患者血清中にレアギン(IgE)が存在する。

診断基準(HanifinとRajkaの診断基準)

アトピー性皮膚炎と診断するためには、以下の大項目3つ以上、小項目3つ以上を満たす必要があります。

  • 大項目
    1. そう痒(かゆみ)
    2. 特徴的皮膚症状とその特徴的分布
    3. 慢性あるいは慢性に出没を繰り返す皮膚炎
    4. 本人あるいは家族にアトピー疾患(喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎)の併発
  • 小項目
    1. 乾皮症
    2. 魚鱗癬・手掌の多数のシワ・毛孔性角化
    3. 即時型皮膚反応陽性
    4. 血清IgE増加
    5. 若年齢層の発症
    6. 皮膚感染症にかかりやすい
    7. 手や足に湿疹が起きやすい
    8. 乳頭の湿疹
    9. 口唇炎
    10. 再発性の結膜炎
    11. 下眼瞼のシワ
    12. 円錐角膜
    13. 白内障
    14. 眼瞼の色素沈着
    15. 顔面蒼白・顔面紅斑
    16. 単純性粃糠疹(はたけ)
    17. 前頚部のシワ
    18. 発汗時のかゆみ
    19. ウール・有機溶媒接触によるかゆみ
    20. 毛孔性角化
    21. 食物不耐性
    22. 環境因子、心理的因子による症状の変化
    23. 白色皮膚描記症

検査所見

  • 血液検査
    1. 末梢血好酸球数:増加。
    2. 血清ECP値:増加。
    3. LDH値:増加。
    4. 血清総IgE値とアレルゲン特異的IgE値:増加。
  • 皮膚反応
    • プリック試験(スクラッチ試験)、皮内反応、パッチテスト。
  • 食物除去試験、食物負荷試験
    • 食物が関与している場合に実施。

治療、管理と予防

  1. 増悪因子の除去:アレルゲン特異的IgE値、皮膚反応の成績などを参考に対応。
  2. 乾燥性皮膚に対しての治療:ワセリンやスキンケアクリーム、尿素製剤やヘパリン様物質を使用。
  3. 炎症の抑制:ステロイド外用薬が第1選択。
  4. 免疫抑制剤:シクロスポリン(CYA)やタクロリムス(プロトピック軟膏)。

注意事項

  • ステロイド外用薬の使用:副作用を心配せず、正しく使用することが重要。
  • 併発症:伝染性膿痂疹、レンサ球菌感染症、カポジ水痘様発疹症、白内障、網膜剥離などに注意。