カリウム(K)
基準値
- 3.5~4.9mEq/L
検査データの読み方
高度低下: 1.9mEq/L以下
- しばしば認める病態: 嘔吐・下痢・摂取不足の組み合わせ
- 時に認める病態: 原発性アルドステロン症、Bartter症候群
中等度低下: 2~2.9mEq/L
- しばしば認める病態: 嘔吐、下痢、下剤服用、利尿薬投与、グリチルリチン、摂取不足
- 時に認める病態: 原発性アルドステロン症、腎尿細管性アシドーシス、Bartter症候群
軽度低下: 3~3.4mEq/L
- しばしば認める病態: 嘔吐、下痢、下剤服用、利尿薬投与、グリチルリチン、摂取不足
- 時に認める病態: 原発性アルドステロン症、Bartter症候群、腎血管性高血症、Mg欠乏
軽度上昇: 5~5.4mEq/L
- しばしば認める病態: 急性腎不全(非乏尿性)、慢性腎不全、偽性高K血症(白血球増加症、血小板増加症)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、β-ブロッカー、スピロノラクトン、非ステロイド性消炎鎮痛薬、糖尿病(低レニン性低アルドステロン症)、アシドーシス
中等度上昇: 5.5~6.4mEq/L
- しばしば認める病態: 急性腎不全(乏尿性)、透析患者、糖尿病性腎臓障害
高度上昇: 6.5mEq/L以上
- しばしば認める病態: 急性腎不全(乏尿性)、透析患者
- これ以上の上昇は心停止を引き起こします
どうして異常値が出たのだろう?
カリウムの値が大きくても小さくても、不整脈を起こす可能性があるため注意が必要です。原因は多岐にわたりますが、心電図の波形からカリウムの値を推定できます。
体内カリウム総量のうち98%は細胞内に存在し、細胞外液中に含まれるカリウムは全体カリウム量の約2%、60~80mEqにすぎません。このため、細胞内外のカリウム移動により血清カリウム濃度は容易に変動します。これに影響する因子として、酸塩基平衡状態(pH)、インスリン、カテコールアミンなどがあります。
1日のカリウム摂取量は約50~100mEqで、その90%以上は尿中に排泄されます。したがって、カリウム代謝の恒常性はほとんど尿中カリウム排泄の調節によってほぼ規定されています。この尿中へのカリウム排泄は皮質部集合管におけるカリウム分泌によって決定されます。
カリウムの調節に影響する因子には以下があります。
- カリウム摂取量
- アルドステロン
- 集合管の尿流速度、ナトリウム到達量
- 非再吸収性陰イオンの存在
低カリウム血症の原因は摂取不足か腎性喪失か腎外性喪失であるかを考えればよく、高カリウム血症の原因としては腎機能低下時での摂取過多か、腎からの排泄低下に大きく分類されます。これら体内バランスの異常を引き起こす病態以外に、細胞内外の移動による因子を考慮すればよいです。
ワンポイントアドバイス
- 偽性高カリウム血症を除外します(白血球増加症、血小板増加症)。
- 随時尿で尿カリウム濃度を測定し、fractional excretionを計算します(腎性か腎外性か判断します)。
- 動脈血液ガスを調べ、体液pHを評価します。
- 薬剤(漢方薬も含めて)による影響(偽性アルドステロン症)を考慮します。
- 低カリウム血症と代謝性アシドーシスの組み合わせは、下痢と尿細管性アシドーシス(typeⅠおよびⅡ)の場合しかありません。




