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化学伝達物質の働きと臨床症状の出現(病態生理)


以下はプロレベルの話だ。理解できなくても結構。目を通しておく価値は十分にある。肥満細胞の脱顆粒現象を理解した方には、十分理解できるものと推察し、掲載する。


アレルギー性鼻炎は従来、吸入抗原による典型的なI型アレルギーと考えられてきた。 IgEと肥満細胞が主役となる反応は、抗原が侵入して数分から数十分で症状が現れるので「即時相」と呼ばれる。この過程には、以下の二つの段階がある。 

(1)第1段階…IgE抗体放出と肥満細胞感作 抗原の侵人によって活性化したT細胞(Th2)はインターロイキン(IL)-4などを放出し、それによって刺激されたB細胞がIgE抗体を産生、放出する。この産生部位としてはWaldeyer輪が想定されている。IgE抗体は血液を介して体内で、細胞表面にIgE受容体を持つ細胞、特に肥満細胞に結合する。 

(2)第2段階…IgE架橋と顆粒放出 肥満細胞にIgE抗体が付着して感作状態にあるときに、再び同じ抗原が侵入してIgE抗体に付着すると、IgE抗体とIgE受容体が、抗原によって架橋され、肥満細胞内の顆粒が細胞外に放出される。放出顆粒からメディエータが組織内に遊離し、これらが血管や神経などに作用し、アレルギー症状が発現する。 しかし、発作後長時間して起こったり、発作後も持続する鼻閉はこうした即時相反応だけでは説明がつかない。もう一つの反応である「遅延相」反応は、T細胞・好酸球性アレルギー反応であり、以下の過程をとる。すなわち、抗原の情報を得た抗原提示細胞がT細胞(Th2)に情報を伝え、それにより、IL-5などを分泌する。これにより好酸球は血中から局所に集まり、活性化して顆粒やメディエータを放出する。顆粒から遊離した細胞傷害蛋白が上皮を傷害し、組織に炎症を起こさせる。またメディエータが血管に作用して鼻閉が生じる。  


病態生理解説

 肥満細胞から遊離したヒスタミンなどのメディエータが鼻粘膜上皮、固有層に分布する三叉神経終末を刺激すると、その情報がc線維を上行し、延髄に達し、反射的にV、VII、IX、X、XI、XIIの脳神経や脊髄神経を介してくしゃみが生じる。 鼻汁分泌の機序には血管漏出による要素もあるが、その関与は5%以下とみなされており、主体は鼻腺からの分泌亢進である。鼻腺の分泌刺激にはメディエータの直接作用と神経反射を介する間接作用の二通りが考えられるが、後者の役割が圧倒的に多く、約80%を占める。神経反射の遠心路は副交感神経であるが、求心路はくしゃみと共通する知覚神経で、中枢(上唾液核)を介する反射と翼口蓋神経節を介する反射に分けられる。 

 鼻閉の原因には血管の拡張、血管からの血漿漏出による浮腫、それに慢性化した場合の炎症性粘膜肥厚の要素があるが、前2者が主である。血管拡張と血管透過性亢進は神経性の要素もあるものの、メディエータの血管への直接刺激に起因する比率が高い。メディエータには、ヒスタミン、ロイコトリエン(LTC4、LTD4)、血小板活性化因子(PAF)、プロスタグランジン、ブラジキニンなどがある。鼻閉の両要素について経過でみると、即時相では血管拡張が、遅延相では浮腫が主体となる。慢性期の通年性鼻アレルギーにおいては鼻甲介粘膜表面の小動脈や毛細管の収縮、透過性亢進により血流は低下しており、局所の乏血と、透過性亢進による貯留水分の増加とにより浮腫を生じる。発生した浮腫によりさらに細血管が圧迫され血流は減少するという悪循環が生じる。 




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