赤血球数〔RBC〕 血色素量ヘモグロビン[Hb] ヘマトクリット[Ht] 網赤血球数[Ret]
red blood cell count、hemoglobin、hematocrit、reticulocyte
count
基準値(静脈血)
★RBC
・男性:427〜570×10000/μL
・女性:376〜500×10000/μL
★Hb
・男性:13.5〜17.6g/dL
・女性:11.3〜15.2g/dL
★Ht
・男性:39.8〜51.8%
・女性:33.4〜44.9%
★網赤血球数(Ret)
・男性:0.2〜2.7%(2〜27‰)
・女性:0.2〜2.6%(2〜26‰)
★平均赤血球容積(MCV)
・男性:82.7〜101.6fl
・女性:79〜100fl
★平均赤血球血色素量(MCH)
・男性:28〜34.6pg
・女性:26.3〜34.3pg
★平均赤血球血色素濃度(MCHC)
・男性:31.6〜36.6g/dL
・女性:30.7〜36.6g/dL
[検査データの読み方]
1)RBC、Hb、Ht
高値(高度増加) | Hb:18g/dL以上 | [しばしば認める病気]真性多血症 [どうするか]循環赤血球量の検索、他の血液一般検査とあわせて原因となっている病気の診断と治療 |
高値(軽度〜中等度増加) | Hb:16〜18g/dL | [しばしば認める病気]二次性多血症(動脈血酸素分圧の低下を伴う心肺疾患、エリスロポエチン産生腫瘍による多血など)、ストレス多血症、脱水による赤血球増加症 [どうするか]循環赤血球量の検索、他の血液一般検査とあわせて原因となっている病気の診断と治療 |
低値(減少) | ・RBC:300×104/μL以下 ・Hb:10g/dL以下 ・Ht:30%以下 |
[しばしば認める病気]貧血 [時に認める病気]貧血をきたす疾患は血液疾患以外にも非常に多い [どうするか]MCV、MCH、MCHCによる貧血の鑑別や他の血液一般検査の結果とあわせて原因となっている病気の診断と治療 |
2)網赤血球数
高度増加 | 10%以上 | [しばしば認める病気]網赤血球分利(1.鉄欠乏性貧血または悪性貧血の治療時、回復時。2.大量出血の回復時)、重症サラセミア、続発性貧血 [どうするか]原因となっている病気の診断と治療 |
軽度〜中等度増加 | 3〜10% | [しばしば認める病気]溶血性貧血、軽症サラセミア、DIC [どうするか]LDH、ハプトグロビン、直接Coombs試験、赤血球浸透圧抵抗試験、Ham試験、ヘモグロビンなどを必要に応じて検索し、原因となっている病気の診断と治療を進める。 |
減少 | 0.5%以下 | [しばしば認める病気]再生不良性貧血、悪性貧血増悪期、急性白血病、骨髄機能低下 [どうするか]血清鉄、TIBC、フェリチン、LDH、ビタミンB12、鉄染色などの検索 |
3)MCV、MCH、MCHC
大球性正色素性貧血 | ・MCV:100fl以上(増加) ・MCHC:32〜36%(基準範囲) |
[しばしば認める病気]悪性貧血(ビタミンB12欠乏など)、葉酸欠乏性貧血、肝障害性の貧血 [どうするか]原因となっている病気の診断と治療 |
正球性正色素性貧血 | ・MCV:80〜100fl(基準範囲) ・MCH:26〜35pg(基準範囲) ・MCHC:32〜36%(基準範囲) |
[しばしば認める病気]溶血性貧血、急性出血、再生不良性貧血、白血病、腎性貧血、感染症、悪性腫瘍など [どうするか]原因となっている病気の診断と治療 |
小球性低色素性貧血 | ・MCV:80fl以下(減少) ・MCH:26pg以下(減少) ・MCHC:32%以下(減少) |
[しばしば認める病気]鉄欠乏性貧血、サラセミア症候群、鉄芽球性貧血、無トランスフェリン血症、妊娠貧血、慢性炎症に伴う二次性貧血 [どうするか]原因となっている病気の診断と治療 |
[どうして異常値が出たのだろう?]:鉄分不足からくる貧血にも、その原因はいろいろ。消化器系のガンや、婦人科疾患にも注意。
★RBC、Hb、HtおよびMCV、MCH、MCHC
RBC、Hb、Htは貧血や赤血球増加症の検索のために行われるが、日常遭遇するのは貧血がほとんどである。赤血球増加症には、赤血球量が増加しているものと循環血漿量が減少して起きる見かけ上のものがあるので、注意を要する。
また、RBC、Hb、Htだけでは、原因的な診断はできないので、網赤血球数、MCV、MCH、MCHC、白血球数、血小板数などとあわせて、診断、鑑別や病態の把握をする。MCV、MCH、MCHCは貧血の鑑別診断に有用である。
小球性貧血(骨髄) | 大球性貧血(骨髄) | 赤血球連銭形成(末血) | 標的赤血球(末血) |
★網赤血球数
網赤血球は成熟赤血球になる前段階の幼若な赤血球で、その測定により骨髄の造血能を推定することができ、貧血などの血液疾患の診断や治療効果の判定に有用である。骨髄検査は、患者の負担を考慮すると頻繁に行えないので、その点からも有用性は高い。
また、%や‰は全赤血球中に対する比率なので、絶対数を算出して判断する必要がある。
[付録]赤血球恒数の算出方法:今はコンピューターで自動計算されていますが、その意味を知るには下の式をよく読んでみてください。意義深いでしょ?
MCV、MCH、MCHCの算出法
・MCV(mean corpusle volume)=Ht(%)/RBC(10000/μL)×1,000:赤血球一個あたりの大きさ
・MCH(mean coepusle hemoglobin)=Hb(g/dL)/RBC(10000/μL)×1,000:赤血球一個あたりの血色素量
・MCHC(mean corpusle hemoglobin concentration)=Hb(g/dL)/Ht(%)×100:赤血球一個あたりの血色素濃度