尿沈渣  

Urinary Sediments

基準値

顕微鏡強拡大(×400)の場合の基準値は以下の通りです:

  • 赤血球: 1個/視野以内は正常
  • 白血球: 1~3個/視野以内は正常
  • 円柱: 1~2個/全視野以内。硝子円柱は正常でも認められることがある。その他の円柱は正常では見られない
  • 上皮細胞: 1個以下/10視野。扁平上皮(尿道、外陰部由来)は正常でも見られる。立方上皮(尿細管上皮)や移行上皮(腎盂から膀胱に由来)が見られたら異常
  • 卵円形脂肪体: 正常では見られない
  • 細菌、結晶: 少量は認められることがある。尿放置で増加

検査データの読み方

顕微鏡で尿の観察を行います。

1. 赤血球の増加

強拡大で1視野1~5個以上あれば異常です。

  • 内科的血尿(糸球体性血尿のことが多い): 慢性糸球体腎炎(IgA腎症、膜性増殖性腎炎、膜性腎症など)、急性糸球体腎炎、ループス腎炎、家族性良性血尿、急速進行性腎炎、間質性腎炎、尿細管壊死、嚢胞腎、腎結核、腎梗塞、遊走腎、ナッツクラッカー現象、特発性腎出血
    • 対応策: 早朝尿で再検査し、糸球体性疾患が疑われたら腎生検を行います。
  • 泌尿器科的血尿(非糸球体性血尿): 尿路結石、膀胱炎、膀胱腫瘍、前立腺炎、前立腺腫瘍、尿管腫瘍、腎盂腫瘍、腎腫瘍、腎・尿路の外傷
    • 対応策: 泌尿器科的検査と治療を行います。

2. 白血球の増加

強拡大で1視野5個以上あれば異常です。

  • しばしば認める病気: 腎・尿路系の感染症(腎盂腎炎、膀胱炎、前立腺炎など)
  • 時に認める病気: 急性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎の急性増悪期、ループス腎炎、薬剤性急性間質性腎炎、乳び尿
    • 対応策: 尿中細菌の有無を調べ、原因となっている病気の診断を行います。

3. 上皮細胞

強拡大で10視野1~数個以上あれば異常です。

  • よくある病気: 扁平上皮細胞(尿道、外陰部由来)は病的意義がない。立方上皮(尿細管上皮細胞由来)の増加は尿細管障害。移行上皮(腎孟から膀胱由来)の増加は尿路の炎症・腫瘍を疑わせる。
    • 対応策: 原因となっている病気の診断を行います。

4. 円柱

弱拡大(×100)で全視野1~2個以上あれば異常です。

  • よくある病気: 硝子円柱は正常でも少数みられる。
    • 対応策: 腎生検などにより原因となっている病気を診断します。

主要な病気と原因

  • 赤血球円柱: 糸球体腎炎、腎梗塞、ループス腎炎
  • 白血球円柱: 腎盂腎炎、間質性腎炎、ループス腎炎
  • 上皮円柱: ネフローゼ症候群、急性尿細管壊死、アミロイドーシス、子癇、移植腎の急性拒絶反応
  • 顆粒円柱: 腎盂腎炎、間質性腎炎、糸球体腎炎
  • ろう様円柱: 腎不全
  • 脂肪円柱: 重症ネフローゼ症候群、ループス腎炎、糖尿病性腎症

尿中の結晶

  • リン酸アンモニウムマグネシウム: アルカリ尿、特に尿路感染症でみられるが、正常でも見られることがあります。
  • 尿酸: 酸性尿で見られる。尿路結石でみられることがある。
  • シュウ酸カルシウム: 正八面体、酸性尿で見られる。
  • シスチン、チロシン、ロイシン、ビリルビン、コレステロール結晶: 病的結晶としてそれぞれの疾患に関連。

まとめ

尿沈渣検査は腎・尿路系の異常を早期に発見するために非常に重要です。異常が見られた場合、専門医とよく相談し、適切な治療を受けることが大切です。