蕁麻疹(じんましん)

概念と定義

蕁麻疹は、限局性の痒みと発赤を伴う膨疹で、突然出現し数時間後に消退する一過性、局在性、表在性の浮腫です。体中に点状、線状、円形、世界地図のように膨らんだ発疹が出没し、また移動することがあります。深在性(真皮下層の皮下脂肪)に出現した浮腫を特に血管浮腫と呼び、広範に皮膚が硬結し、痒みは少なく、眼瞼や口唇に多くみられます。臨床経過より急性型と4週以上続く慢性型に分けられ、非常に多くの人が一生に一度は経験するといわれています。

病態生理

皮膚の発赤は血管拡張、浮腫は血管透過性亢進による血漿成分が組織に漏出することによって生じます。蕁麻疹は真皮上層の毛細血管、血管浮腫は真皮下層の血管周辺の病変です。その原因は多様ですが、機序はアレルギー性と非アレルギー性に大別されます。

蕁麻疹の分類

アレルギー性

  1. IgEを介するI型アレルギー反応
    • 食物、薬剤、環境抗原、昆虫毒素など
  2. 補体を介する反応
    • 免疫複合体、感染、輸血、癌、遺伝性血管浮腫(HAE)

非アレルギー性(非物理的刺激)

  1. 物理性蕁麻疹
    • 機械性、寒冷、温熱、運動、日光、水、圧迫、振動、コリン性
  2. 非ステロイド性抗炎症薬による反応
    • アスピリン、食品添加物
  3. その他
    • ヨード造影剤、精神的ストレス

感染症

  • ウイルス感染など

臨床検査所見

IgEの関与したI型アレルギーが原因の蕁麻疹は、即時型皮膚テストやRASTが陽性となります。補体の関与した反応では、補体価の低下が見られます。物理性蕁麻疹は皮膚への様々な物理刺激(圧迫、引っかく、暖める、冷やすなど)によって再現できます。

診断

一過性の皮膚の発赤と膨疹を観察すれば診断は難しくありませんが、原因を特定することは容易ではありません。詳細な問診により、原因となるアレルゲン、状況、薬剤などを推定し、検査、負荷試験で確認します。膠原病、感染、悪性腫瘍、補体系異常によるものは基礎疾患の診断が重要です。

治療、管理と予防

原因療法

蕁麻疹の原因・誘因が明らかであれば、それらを回避します。アレルゲンとなる食物、薬剤、吸入・接触抗原や物理刺激を除くほか、精神的・肉体的ストレス、疲労、睡眠不足などは自律神経の失調を招き増悪するので、ストレス管理に努めます。

対症療法

抗ヒスタミン薬を用います。管理困難な場合には、ヒスタミンH2受容体拮抗薬(ガスターなど)を併用すると効果が上がることもあります。慢性蕁麻疹には、抗アレルギー薬を連用し、症状が重く難治性の場合には、副腎皮質ステロイドを短期間使用します。心因性の蕁麻疹には、精神安定剤や抗うつ薬の投与も考慮されます。

体質改善

体質改善療法も試みますが、喘息や鼻アレルギーほど特異的減感作療法の効果は認められません。しかし、非特異的減感作療法は時に有望であり、慢性化した蕁麻疹では試みてほしい治療方法です。