血液像・白血球像、白血球分類

white blood cell morphology、leukocyte classification

基準値

  • 好中球
    • 桿状核球: 7.5% (2~13)
    • 分葉核球: 47.5% (38~58.9)
  • リンパ球: 36.5% (26~46.6)
  • 好酸球: 3% (0.2~6.8)
  • 好塩基球: 0.5% (0~1)
  • 単球: 5% (2.3~7.7)

白血球分類

ヘモグラムとも呼ばれ、顕微鏡で白血球の形態を観察し、分類、カウントします。単純な検査ですが、その意味合いは深く、他の検査と併用して臨床の経過を追うのに便利です。

好中球

増加 (60%以上、7,500/μL以上)

  • 感染症: 肺炎、敗血症、髄膜炎、脳炎、猩紅熱、扁桃腺炎、胆嚢炎、腎盂腎炎、虫垂炎
  • 血液疾患: 急性出血、急性溶血、骨髄性白血病、真性多血症、Hodgkin病
  • 悪性腫瘍
  • 膠原病: 慢性関節リウマチ、Wegener肉芽腫症、Behcet病、動脈周囲炎、血管炎
  • 神経疾患: 脳出血、脳腫瘍、脳梗塞
  • 内分泌代謝疾患: Cushing症候群、糖尿病アシドーシス、痛風、ステロイド剤投与時
  • 消化器疾患: 肝硬変末期、膵炎
  • 腎疾患: 腎不全
  • 中毒: ジギタリス、水銀、鉛、クロロホルム
  • 異種蛋白の注射: ワクチン
  • ストレス: ショック、心筋梗塞、熱傷、骨折
  • 生理的: 妊娠、新生児、肉体労働、入浴

減少 (40%以下、1,000/μL以下)

  • 血液疾患: 再生不良性貧血、悪性貧血、顆粒球減少症、骨髄腫、骨髄線維症、骨髄異形成症候群
  • 重症感染症: 粟粒結核
  • 感染症: チフス、ウイルス性疾患、原虫疾患、住血吸虫症
  • 肝脾疾患: 肝硬変症、特発性門脈圧亢進症などの脾機能亢進
  • 内分泌疾患: Addison病、Basedow病(Graves病)
  • 薬剤: アミノピリン、バルビタール酸、砒素、クロロマイセチン、抗腫瘍剤、抗甲状腺剤
  • 放射線障害

好酸球

増加 (5%以上、700/μL以上)

  • アレルギー性疾患: 気管支喘息、じん麻疹、薬剤アレルギー、血管炎、皮膚筋炎、枯草熱
  • 血液疾患: 慢性骨髄性白血病、Hodgkin病
  • 寄生虫疾患: 回虫、十二指腸虫、ジストマ、フィラリア
  • 皮膚疾患: 天疱瘡、痒疹、多形滲出性紅斑
  • 放射線照射後
  • 悪性腫瘍の転移
  • 好酸球増加症候群: 結節性動脈炎、好酸球性肉芽腫、PIE症候群、Loeffler症候群、好酸球性白血病

減少 (2%以下、100/μL以下)

  • 診断的意義は少ない: ステロイドホルモン投与中
  • 諸種感染症の初期: 猩紅熱、麻疹を除く。特に腸チフスでは特徴的
  • 血液疾患: 悪性貧血、再生不良性貧血、顆粒球減少症
  • 内分泌疾患: Cushing症候群
  • ストレス

好塩基球

増加 (2%以上、150/μL以上)

  • アレルギー疾患: じん麻疹
  • 内分泌疾患: 粘液水腫
  • 血液疾患: 慢性骨髄性白血病、真性多血症、原発性血小板血症、骨髄線維症
  • 慢性疾患: 潰瘍性大腸炎

リンパ球

絶対的リンパ球増加 (4,000/μL以上)

  • 生理的: 小児期
  • 急性感染症および急性中毒症の回復期: 伝染性単核球症(異型リンパ球増加)、百日咳、結核、腺熱、水痘症後期
  • 血液疾患: リンパ性白血病、マクログロブリン血症、リンパ腫
  • 内分泌性疾患: Basedow病、Addison病

相対的リンパ球増加 (40%以上)

  • 好中球減少症を起こす場合と同様

減少 (25%以下、1,000/μL以下)

  • 急性感染症の初期
  • リンパ組織の破壊: 悪性リンパ腫、結核
  • 血液疾患: 再生不良性貧血(重症例)
  • 全身性エリテマトーデス
  • 免疫不全: 先天性免疫不全症候群、AIDS

単球

増加 (7%以上、1,000/μL以上)

  • 感染症: 活動性結核、亜急性心内膜炎、敗血症、水痘、発疹チフス、猩紅熱、麻疹、風疹
  • 血液疾患: 単球性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群
  • 慢性疾患: 慢性肝炎、肝硬変症、潰瘍性大腸炎
  • 原虫病: マラリア、トリパノソーマ病、カラアザール

減少 (3%以下、300/μL以下)

  • 診断的意義は少ない: 重症敗血症、悪性貧血

白血球像 (形態)

顕微鏡で白血球の形態を観察し、各種の血液疾患を発見します。

顆粒球の異常

  • 核の異常
    • 左方移動: 桿状核球の増加、後骨髄球・骨髄球の出現
      • 類白血病性反応、慢性骨髄性白血病、骨髄線維症
    • 右方移動、過分葉: 4分葉以上の増加
      • 巨赤芽球性貧血、DNA合成障害、抗腫瘍剤の投与
    • 低分葉: 2分葉以上なし
      • 骨髄異形成症候群、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、抗腫瘍剤の投与、Pelger-Huet異常
    • ドラムスティック: 核の突起
      • 性判別が可能
  • 細胞質の異常
    • 中毒顆粒: 細胞質の成熟不完全
      • 重症感染症、敗血症、薬剤中毒、Alder-Reilly異常
    • Doehle小体: 細胞質の成熟不完全
      • 猩紅熱、重症感染症、敗血症、薬剤中毒、抗腫瘍剤の投与、May-Hegglin異常
    • 空包形成
      • 重症感染症、細胞障害性変化、脂質代謝障害、魚鱗癬、Jordans異常、リンパ性白血病(L-3)
    • 巨大顆粒
      • 急性白血病、Chediak-Higashi症候群、好中球遊走障害

リンパ球の異常

  • 異型リンパ球
    • 伝染性単核球症、種々のウイルス・リケッチア感染症、麻疹、風疹、帯状疱疹、急性ウイルス性肝炎、大量輸血後、結核、アレルギー疾患、薬剤中毒、慢性リンパ性白血病

異常値の科学的理由と臨床的意味

  • 白血球の増加は、腫瘍性増殖や造血因子の反応性あるいは異所性の産生増加によります。
  • リンパ系細胞の増加も、腫瘍性あるいはサイトカイン産生の亢進によります。
  • 白血球の減少は、造血幹細胞の異常や造血因子、サイトカインの減少によります。

判読

  • 白血球分画の異常は、白血球数を乗じて得られる絶対数で判定することが重要です。

薬剤影響

  • ステロイド剤の服用は白血球分類を大きく変動させます。